昨日からの顛末

 3日くらい前から、舌の動きがことさら悪くなり、口からはみ出している時間のほうが長くなっていた。それでも、動かない舌を使って一生懸命足指を舐める姿には、止めるどころか、頑張れと言いたくなった。

 昨日の朝は食欲があったので、病院で試しにゆでた肉を見せたところ、食べたそうに口に入れた。でも、わずか数ミリ角の肉が、奥に全く入って行かなかった。いつまでの舌の先に留まり続け、最後には取り出さなければならなかった。

 それを見て、私は、エアリアルを延命することは、却って残酷だと強く感じた。帰宅後、クリームも欲しがらなかったから、無理に口をこじ開けてまで食べさせるのはやめた。そして、「もう頑張らなくていい」と、blogに書いた。その後から、エアリアルの呼吸が弱くなった。夕方、友達が来るのを待ちながら、
「もう、十分頑張った。ありがとう。ママのことは心配いらないから、もう頑張らなくていいよ。」
と、語りかけた。夕方から、一切の経口摂取を拒否するようになった。 朝、あれほど欲しがったのだから、もう少し頑張ってと言っていれば、もっと生きる気持ちを保てたのかな。「もう少し頑張ろうと思ったけど、ママがそう言うならやめる。」と言われたような気がして、心が痛んだ。
 夜、なんとか2ccくらい入れることができたが、飲み込めていない様子だった。

 今朝は、首が上がっていたので、気分がいいのかと、水を飲ませようとした。断固拒絶。缶詰フードにもそっぽを向いた。それでも、無理に注射器を口に入れようとしたら、どこにそんな力が残っていたのかと思うほど強く、注射器を払いのけた。
 どんな時も、気が向かなくても、いつも一生懸命ママのいうことを聞いてきたエアリアルが、初めて見せた強い反抗だった。

 これが、エアリアルの意志なんだね。ママは、エアリアルが初めて見せた強い意志を、尊重してあげたい。

 このことを、昨日来てくれた友達にメールしたら、
「ママも、もう頑張らなくていいよと言ってくれてるのでしょう」
と返事が来た。

 ああ、きっとそうだね。エアリアルは、いつもママのために全力だった。ママが一歩前進しようと決めたのを見て、エアリアルも安心して旅立つ時が来たんだね。

 朝、いつものおしっこスポットにカートで連れて行った。トイレシートの上に下ろすとすぐ、排尿した。最後まで手の掛からない子だ。
 病院で、いつもの点滴。体重6.6kg。先週土曜日以来、毎日200gずつ減っている計算。外耳道の感染がかなりひどいので、清拭、外用薬。看護師さんたちが処置してくれている間、エアリアルはされるがままだった。歯茎も舌も耳の裏も、血の気がない。私は、死期を悟った動物の目を初めて見た。
 主治医から、「ここまでしてもらえる子は、そういないよ」と言われた。そう言ってもらっても、心は晴れない。病気になってから熱心に看病されるより、元気な頃に楽しい思い出がある方が幸せなんじゃないの?

 一番悔いが残るのは、3月以降エアリアルが不調だったのは病気のせいだったのに、そのことに気付かず、「トロい!」「甘えてる」と怒ったこと。一生懸命やっているのに怒られて、エアリアルは悲しかったことだろう。

 家に帰る道中、エアリアルは首を上げて、私の方を見ていた。やがて、コットの縁に顎を乗せてウトウトし始めた。気持ちのいい天気を楽しむかのようだった。途中から、呼吸が弱くなり始め、家に着くまでもつか心配になったが、どうにか帰り着いた。
 今、エアリアルは私の傍らで寝ている。死を目前にしても、エアリアルが隣にいる静かな時間は、私にとって至福の時間だ。

 エアリアル、ママにエアリアルの看病をする時間をくれて、ありがとう。

by sawa4482 | 2012-10-26 12:19 |