昨夜から今朝まで

 昨日、広場に連れて行く前、エアリアルに行くかどうか尋ねたら、「そんなの、もう、どうでもいいよ」と言った気がした。広場で身動き一つせず横たわったままのエアリアルを見て、本当に終わりが近いことがわかった。

 帰宅後しばらくは、いつものように寝ていた。肩で息をしていた。7時頃から、何度も姿勢を変えて痰を吐こうとした。うまく吐けないのか、何度も何度も、のどの奥から絞り出すようにした。体は痩せこけ、顔も体もすっかり毛が薄くなっている。これ以上苦しまないで、早くこの苦しみを終わらせて、と祈った。背中をなでながら、「苦しまないで」と声をかけ続けた。もうこの場で息が止まるかと思った。しばらくしたら「ママ、楽になったよ、ありがとう」と言ったような気がして、落ち着いた。

 いつもより早く、9時半頃一緒にマットレスの上に移動した。マットレスの上でも、どちらを向いても苦しいようで、たびたび姿勢を変えた。息をする度、のどに痰が絡んでいる音がした。どうやったら少しでも楽になるのか、顎の下に枕を置いてみたり、向きを変えてたり、あれこれやってみた。そのうち少し静かになり、私もウトウトした。深夜0時過ぎ、苦しそうな息遣いで目が覚めた。鼻が血の混じった膿で詰まっていたので、掃除。嫌がったけど、掃除をしたら少し呼吸が楽になった。
 3時過ぎ、再び苦しそうな息で覚醒。再び鼻掃除。弱々しく呼吸をするエアリアルの背中をなでながら、エアリアルの体の中の最後の灯火がだんだん薄れていくのを感じていた。

 4時過ぎ、痰を吐く音で目が覚めた。エアリアルの体を起こして背中をトントンしたが、痰が詰まったのか、エアリアルの呼吸が止まった。そして、空気を求めるかのように、何度か口をパクパクさせた。すぐにその動きも止まった。とうとうその時が来たのだと思った。現実とは思えなかった。エアリアルを抱きしめて、心臓の鼓動を手のひらに感じた。エアリアルの鼓動が少しずつ遅くなり、やがて止まった。
 その瞬間は、エアリアルを失う悲しみより、やっとエアリアルが苦しみから解放されるという安堵感の方が強かった。そのせいか、自分でも驚くほど冷静にエアリアルの体をきれいにし、片付けをした。

 することがなくなり、落ち着いてから、悲しみがこみ上げてきた。9月の終わりに急変してからは、奈落の底に真っ逆さまに落ちるように悪化していった。たった1ヶ月だったのに、悪くなってからのエアリアルの映像があまりに鮮明で、元気だった頃のエアリアルの姿を思い出すことができない。歩けなくなっても必死にトイレまで行こうとする姿は、切なくてたまらなかった。何も食べられなくなって、日に日に衰弱するのをただ見ているしかなかったのは、本当に苦しかった。最後は、早くエアリアルを苦痛から解放してやってくれと祈った。そうやって、少しずつ心の準備をする時間を与えてくれ、むしろ死はエアリアルにとって歓迎すべきものと納得することができた。

 なのに、どうしてこんなに悲しいんだろう。

 今、エアリアルはソファの左半分に横たわり、私はその右側に座っている。エアと二人きりになってから定番の位置だ。こうしていると、かけたタオルの下で、エアリアルの胸が上下しているような錯覚に陥る。エアリアルが冷たく硬くなって、もはやエアリアルの魂が体から離れたことを感じる今でも、まだ、これが現実のこととは思えない。

by sawa4482 | 2012-10-31 10:03 |